歯ツラツくん
BLOG

ホーム歯ツラツくんBLOGこれだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」①
訪問歯科診療

これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」①

投稿者:訪問歯科119番

 

対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・

訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者

 

在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、

訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる

今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。

訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく

お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの

質向上につなげてください。

 

はじめに

在宅医療とは、疾患があり定期的な通院が必要な状態であるにも関わらず、何らかの事情で定期的な

通院が困難な患者に対し、医師や歯科医師を始めとする医療従事者が定期的な訪問を行いながら、

在宅で医療をおこなうこととされています。在宅医療はまだ歴史が浅く、これからの医療です。

しかし、これからの超高齢化社会や医療の制度改革により、今後の在宅医療の重要性がますます

高まることは明らかです。患者様の価値観に敬意を払い、暮らしのなかで「いのちを支える」、

「生き方を支援する」医療活動なのです。どの地域に居住していても、安心で安全、

そして質の高い歯科医療を受けられるようになること、それが訪問歯科診療を推進する我々の

共通の願いです。

 

第1節 訪問歯科診療

1)訪問歯科診療の現状

厚生労働省の定義では「訪問診療」と「往診」は明確に区別され、患家の要請によるものではなく、

計画的な医学管理のもとに定期的に患者宅あるいは社会福祉施設等に訪問して実施されるものを

「訪問診療」と言い、患家の求めにより緊急に診療に赴くことを「往診」としています。そのため、

居宅または社会福祉施設等において療養を行っている通院が困難な高齢者や障害者の方々に対し、

居宅や社会福祉施設等を訪問し歯科診療を行うことを「訪問歯科診療」と呼びます。

 

(2)診療内容

通常、院内で行う診療の大部分は、訪問診療でも行うことは可能です。

しかし、高齢者の健康状態によってはリスクが大きくなる場合もあるため、そのような場合、

治療を行わないケースもあります。

また、ご本人、ご家族、介護事業者の方によく説明し、大学病院の紹介やリスクを伴わない

範囲の治療や口腔ケア、管理指導等の対応に留める場合もあります。

 

(3)治療費

訪問歯科診療は院内で行われる診療と同様、患者が持っている健康保険証が適用され、

一部負担金は各々の負担金にて徴収します。但し、訪問先が「居宅」の場合であって、

該当患者が「要介護認定者」である場合は、歯科医院側が実施する「医学管理」等は

介護保険の適用となり、医療保険の一部負担金と介護保険での負担金が同時に発生します。

*交通費や謝礼は一切いただかないように努めてください.

 

第2節   訪問診療を開始する前に

高齢患者は特に医療に対する要求や気持ちの変化が顕著な場合が多く、ただ疾病を診るだけでなく、

その生活環境や介護状況、精神的状況等を包括的に把握し対処する必要があります。

在宅においては本来、検査や高度な治療がおこない難い反面、患者の置かれる立場を

認識することが必要です。

したがって訪問診療では、患者の家庭環境や人生観に合わせても医療を構築することが重要となります。

患者や家族の意思や状況を無視して医療を組み立てたとしても、決して長続きはしないのです。

 

(1)情報収集とラポール形成

訪問歯科診療において患者に関する情報を得るということはとても重要なことです。

高齢者は何らかの疾患に罹患している、あるいは何らかの薬剤を服用している

ケースが多く見受けられます。

また、身体状況が急激に変化することも、しばしばあります。

そのため、訪問歯科診療を行うにあたり、

患者がどのような疾患に罹患しているのか、主治医の医師はどこなのか等の情報を

得ることは必須です。

感染症予防の観点から、感染症罹患の有無を確認することも同様です。

また、患者を取り巻く人間関係を把握するということも必要です。

介護者の誰がキーパーソンなのかということを理解していないと、

後々、治療方針や家庭内の人間関係を巡る

トラブルに巻き込まれる可能性があります。

直接、間接的にできるだけ多くの情報を得るという姿勢、

人間関係を構築するという姿勢が、初診時には求められます。

 

(2)歯科診療だけではない

訪問歯科診療は、歯科の治療がメインであることは間違いありません。

しかし、歯科治療はメインであって、全てではありません。

訪問歯科診療では、介護の知識や実務、緊急時の対応なども把握していなければなりません。

把握していることにより、緊急時やトラブルを回避することが可能となります。

 

(3)コミュニケーション

訪問歯科診療は、患者の日常の生活空間に赴き診療を行います。

誰しも、見ず知らずの人に住居内を見られるのは嫌なものです。

また、自宅に来てもらっているという遠慮もあります。

介護者は、要介護者の介護で肉体的にも精神的にも疲れ、

余裕を無くしているものです。

こちらから率先して声をかけたりするなどの心配りが、コミュニケーションを円滑に

進める第一歩となるのです。

コミュニケーションを取るという姿勢がなければ、成功はありえません。

 

①コミュニケーションを取る上でのタブー

訪問歯科診療は、院内での診療に比べコミュニケーションが最重要項目となります。

コミュニケーションがうまく図られ、信頼関係が構築されると診療もスムーズに行えます。

逆にコミュニケーションがうまくとれず信頼関係が築けなかった場合、診療を拒否されることもあります。

患者様とコミュニケーションを図る上で、タブーな行為として、次のようなものがあげられます。

■急がせる

高齢者は体力の衰えにより行動が遅くなる、認知症や障害により言葉が不自由になったりします。

しかし、決して急がせてはいけません。急がせることにより劣等感が増し、

認知症などの症状を悪化させることがあります。

■ばかにする

高齢者の行動や言葉をばかにするような言動も避けるべきです。

認知症を患った方であっても自分がばかにされているということは理解できるのです。

赤ちゃん扱いすることも、同じようなものです。

■無視する、話を聞かない

高齢者特有の心理として「孤独感」「孤立感」「疎外感」があります。

無視、または話しを聞かない等の態度をとられることにより、

より一層の「孤独感」「疎外感」におそわれます。

■否定する

自分の言動について否定されると、傷つき、反感を抱かれることがあるので避けるべきです。

 

②患者との信頼関係を構築する

コミュニケーション上のタブーを行わないというのは当然ですが、

患者様とのコミュニケーションを図る上でポイントとなる点に次のようなものがあります。

■相手を呼ぶときは名前で呼ぶ

「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく相手の名前で呼びます。

■笑顔で接すること

高齢者は新しいことへの対応力が落ちています。笑顔で接することにより、

少しでも緊張を和らげることが必要です。

■顔を見ながらゆっくり話す

聴力や理解力が衰えています。ゆっくり、はっきり話します。

顔を見て話すことで相手も安心できます。

■個人を尊重すること

表現が不自由でも理解力はしっかりしています。

見下したような言動は相手を傷つけてしまいます。

■相手の話をよく聞く

言葉が出るまでに時間がかかるものです。言葉が不自由であっても、

せかさずじっくり聞く姿勢を見せることにより、安心します。

 

話し掛けても反応が鈍い方や認知症の患者であっても、家族にだけ話し掛けていると、

患者様は疎外感を感じます。「話してもわからないだろう」というのは、

治療する側の勝手な思い込みです。理解できているのかできていないのかは、

本人にしか判りません。患者に伝えなければならない内容は、家族だけでなく必ず患者本人にも

伝えてください。敬意を持って接してください。

 

③家族との信頼関係を構築する

患者の家族とのコミュニケーションは、患者とのコミュニケーションと同じくらい重要です。

患者本人が話を理解できない場合や治療に協力的でない場合、

家族への説明や同意が必要となります。

逆に、家族が治療に対し好意的でない場合、治療を断られてしまうケースもあります。

家族とのコミュニケーションで重要なポイントは、相手の立場・心情を理解する、

理解しているという姿勢を見せることです。家族は患者の介護で、

精神的にも肉体的にも疲労しています。

そして、介護している期間が長ければ長いほど、状態が悪ければ悪いほど疲労は重くなり、

精神的な余裕が失われています。たとえ短い言葉でも心からのねぎらいの言葉をかけることが、

家族との関係を良くするひとつのポイントです。

 

(4)インフォームドコンセント

一般的に歯科治療は費用が「高い」というイメージがあります。

訪問歯科診療に至っても同様です。

治療計画を患者様またはご家族へ以下のことを明確に示してください。

・現在の口腔状態

・治療内容

・治療期間

・費用

・ご家庭での留意点

訪問歯科診療は、患者やご家族に喜んでいただいてはじめて成功するのです。

 

(5)患者様本位

患者の主訴を第一優先事項とします。経済的な理由や家庭環境、

身体状況はおひとりおひとり異なります。

院内での診療の場合、本人が通院を止めれば済みますが、

訪問歯科診療の場合はそうはいきません。

診療の押し付けをしてはいけません。

 

(6)患者の健康状態を把握する

患者は日によって体調が変化しています。特に外科的な治療を行う前は、開始する前に、

患者本人あるいはご家族にヒアリングすることが必要です。

患者様の状態を考慮した診療が重要です。

 

次回につづく。

 

高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、

口腔ケア、口腔リハビリのご相談は

訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182

記事タグ:これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」①