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歯科裁判より学ぶ、コミュニケーションスキルの重要性

投稿者:訪問歯科119番
歯科の治療費等をめぐって、歯科裁判が依然として、東京地方裁判所で続いています。

7月からでも、確認できたものでも、

▲売買代金請求=原告・㈱白鳳:被告(医)智誠会、

▲損害賠償請求(判決)=原告・坂下雅子:被告(医)丸山歯科クリニック、

▲約料取立請求=原告・置前報恩リース㈱:被告・(医)いのうえ歯科、

▲治療費返還請求=原告・草野由美子:被告・(医)ティースプランニング、

▲診療報酬等請求=原告・(医)沙陽会:被告・山下晃二などがありました。

 

この中から8月26 日に公判(武藤真紀子裁判長)が行なわれた、

診療報酬等請求=原告・(医)沙陽会:被告・山下晃二を傍聴取材したので要旨を報告したいと思います。

本件の訴訟は、初診時・平成23 年7月の案件です。

 

原告の治療(保険外)に対する費用(保険会社から支払金)を、被告が払わないので払ってほしいというものです。

日本・豪州でイベント企画事業をしている山下被告が豪州でサーフボードによって前歯・口腔にケガを負い

応急処置をした後、日本の(医)沙陽会・鈴木デンタルクリニック(東京都)でインプラントを含めた治療を開始し、

その治療費用を巡っての裁判です。

 

歯科医院の選択については、被告は友人の紹介で鈴木デンタルクリニックを選択し、

その際、「歯科医院に全てお任せした」と述べる一方、

「初診時に、治療費290 万と言われ困惑したのを覚えています」とも証言されました。

治療費に関しては「海外旅行保険で治療費が補償できるかどうか、保険会社に問い合わせをしたら、

“対応できる”という旨を確認したので、“支払できる”」という認識を示しました。

原告の鈴木歯科医師は「被告の治療費は、被告に確認したら、

保険会社から支払えるということで理解したのですが、治療については、患者は私に一任するということでしたので、

治療費等の説明はしないで治療を進めた」と述べたが、

武藤裁判長から「本件とは別に普通は、患者さんから治療してほしい内容を聞いて、

診断をして治療計画を立て治療費の概算を示し理解・了解してから、治療に入ると思うのでが」と問われると、

原告は「そうですね、そうだと思います」と戸惑いながら証言されました。

 

一方、医療内容については、被告は「X写真を見ると、前歯のインプラントが斜めに埋め込まれており、

そのほかもまともな治療ではないです。この部分だけでないですが、セカンドオピニンオンに意見を求めたら、

その先生(都内開業医)は“これは治療ではないし、そもそも治療の途中、終っていません”と言っています。

また、“治療した”というインプラントの本数も違うので、診療費の請求に応じる理由はないと思いました」と

治療費不払いの理由を示しました。

なお、原告が裁判長から歯科用語 “ブリッジ”、“フィクスチャー”、“アバットメント”、

“プロビショナルレストレーション”などについて説明を求められたり、

「インプラント1本30万円という価格の理由、根拠はあるのですか」と詰問されると、数秒の沈黙があった後

「特別に根拠はありません。漠然としていますが、その時期の相場です」と述べ、「初診料もそうですか」

との質問にも「そうです」と躊躇うことなく答えていました。

 

また、裁判長から今度は被告へ、「保険会社から治療費にあたる補償金は支払われたのですか」と確認を

求められると、「それは支払われました」と述べ、

「では、支払うことができるし、その意思はあるということですか」と指摘されると、

「治療内容が納得いくものであれば払います。払わないとは言っていません」と不満を示しつつ、

妥当な治療であればそれに見合う費用は払うということでした。

「治療の後、英語を使う事業をしているが発音がダメになり、ビジネスにも支障を来たしていえること、

この治療の生活等で精神的に不調になり、病院から“うつ病”と診断される病気になった」と証言していました。

約2時間半の公判であったが、武藤裁判長は「お互いの言い分は一応わかりました。

裁判所としては、和解を勧めたいと思っていますが」と問われ、

基本的には和解の方向性で勧められることになりました。

 

原告・被告それぞれの和解の意向を確認すると、原告弁護人から「被告は具体的に払う金額は、

また保険会社が支払う期限は半年です。被告は、半年後も通院していますので、

それは被告自身が自ら払うことになることを、承知していますね」と指摘に対して、

被告は、「知っています」と答弁しました。

 

また、原告弁護人が、「払う、払うと言っているが、いくら払うのか」とやや興奮気味に問い詰める

場面もありました。

武藤裁判長からも「どうですか。基本的治療費は払わなくてはならないのですが、具体的な支払金額は」と問われ、

「今すぐ、というのは難しいです」と述べるに止まりました。

被告の来月の支払金額提示をもって“和解”に進むものと思われます。

 

今回の歯科裁判でも、従来の事案と同様に、やはりどのような事情の患者であっても、

歯科医師の治療をするにあたっての説明不足感は否めない。

裁判長から求められた用語説明にも、平易に十分に理解されるような説明できたかどうかは

疑問を示さざるを得ない。治療費の価格には“根拠なし”発言なども印象的であった裁判でもあったようです。

 

この裁判で、患者様へのインフォームドコンセントが十分でないことが、最大の原因という印象を受けました。

訪問歯科診療においては、さらにその重要性は増すものですから、訪問歯科119番での受付時における

ファーストコンタクトでの患者様への配慮には、さらに気を配る必要性を感じました。

患者様だけでなく、介護者や主治医等との信頼関係構築のための「コミュニケーションスキルが最重要」

であることを改めて痛感させられました。

 

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