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訪問歯科診療

これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」③

投稿者:訪問歯科119番

 

対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・

訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者

 

在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、

訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる

今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。

訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく

お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの

質向上につなげてください。

 

第7節 歯科医院によるボランティア活動

歯科医院の役割

(1)ボランティアでの歯科検診

ご自宅や施設、病院等を訪問し、複数の要介護者の歯科検診をボランティアで行います。
検診の目的は、「介護者、要介護者の歯科に関する意識の向上」と「訪問歯科診療の潜在ニーズの発掘」にあります。
検診を希望された方が全員訪問歯科診療の対象患者ではありません。だからといって患者に移行しなかった方の検診が無駄かというと、そうではないのです。
検診を受けたことにより、要介護者や職員の方々に喜んでいただければ、将来的な結果に結びつくのです。
現在、日本の介護は、要介護者を中心に複数の事業者が連携しています。その中で信頼を得ることが重要です。
詳細な情報は「実務編第2節検診とは」をご確認ください。

① 集団型歯科検診の対象者
■ デイサービス利用者
■ デイケアセンター利用者
■ 介護老人福祉施設等の入所者
■ 医療施設に入院中の患者
※集団歯科検診はそれぞれの施設内等で行います。

② 在宅型歯科検診
要介護者のご自宅で歯科検診を行うことを「在宅型検診」と呼んでいます。
在宅検診では1居宅あたり1名(2名の場合もあります)の検診を行います。
居宅での検診を依頼された場合、口腔内に何らかの不自由やトラブルを抱えている方が多いため、検診後の治療申し込みの確率は高くなります。
その場で治療の依頼を受けるケースが大部分です。
(2)各種セミナー

医科と比較して歯科の訪問診療は、一般的にあまり認知されていないのが現状です。
そのため、歯科領域における、口腔ケアの重要性や誤嚥性肺炎の予防、きちんと噛めることの必要性について、告知やマーケティング活動を行っていくことは大変重要です。
セミナーの開催は、その告知・啓蒙活動を行う上でとても有効な手段となります。
また、セミナーは介護事業者と歯科医院間のコミュニケーションを深める意味も持ちます。
介護事業者の方は担当の利用者へ歯科診療を進めるにあたり、「どのような先生が診てくれるのか」という不安を抱いています。
「この先生に診てほしい」「この先生なら安心だ」と事業者のスタッフにアピールするチャンスでもあります。

① セミナーの対象者
■ 介護事業所の職員
■ 介護者(家族)
■ 要介護者(介護サービスを利用している方)

② セミナーの内容
■ 口腔ケアの必要性
■ 誤嚥性肺炎の予防
■ 義歯のメンテナンス方法と義歯の方の口腔ケア
■ ブラッシング指導
■ 家庭でできる口腔ケア
■ 口腔ケアで便利なツール類
■ 口腔衛生と健康の関連性

それぞれの立場で歯科に対する知識等が異なるため、同じテーマでセミナーを行っても話のポイントやレベル、話し方を変える必要があります。
しかし、一番重要なのは「わかりやすい一般的な言葉で話す」ということです。専門用語を一般的な用語に代えて伝えることが求められます。
(3)訪問歯科診療

訪問歯科診療における治療は、さまざまあります。
訪問歯科診療で行ってはならないという処置も法的にはありません。
患者の望む治療を、真摯に行っていただきます。
初回の訪問時には、リスク低減のためにもアセスメント表は必ず作成します。

また、介護者、患者本人、介護事業者とのトラブルを未然に防ぐために、治療方針の十分な説明と同意を得ることも大事です。
患者の中には認知症等に罹患されている方や、高齢により物忘れが激しい方もいます。
治療方針は家族などの介護者の方を含めて説明するようにします。

(4)関係先への情報提供

歯科医院も要介護者をサポートするメンバーの一員です。
担当のケアマネージャーや介護事業者へのマナーとして、トラブルを未然に防ぐ意味でも、情報提供は重要です。
本部では、情報を伝える対象者別にフォーマットを用意しています。

①往診報告書
患者の依頼元である介護事業者とその患者のケアマネージャー向けのフォーマットです。
(照会元とケアマネージャーが同一の場合もあります。)
往診報告書は治療の度に毎回発行する必要はありません。
初診日や治療の節目、治療終了時などに作成します。

③ 診療情報提供書
診療情報提供書は、かかりつけの主治医、又は他の歯科(治療を引き継いでもらう場合など)向けのフォーマットでした。
しかし、平成18年4月施行の診療報酬改定より介護事業者への発行も同様の様式を使用し発行することが許可されました。
訪問歯科診療を受ける患者は、何らかの疾患を患っているケースがほとんどです。その場合、双方の医療上のリスクを回避するためには情報の交換・共有が不可欠です。
簡単な義歯の調整レベルでは必要ありませんが、抜歯等の観血処置が必要なケースでは事前に情報を交換しておくことは重要です。

 

第8節 高齢者や障害者の特徴について

高齢者とは何歳からをいうのか考える時、誰しもはっきりとは自覚できないものです。60歳でも足腰が弱ってすっかり老け込んでしまう人がいる一方で、80歳を越えても元気でパワフルな人がおり、その個人差は年齢とともに大きくなります。高齢者と一言でいってもいろいろな方が混在しており一概に論ずることはできませんが、適切な診療を行うために必要な高齢者の基礎的な特徴について知る必要があります。

(1)高齢者の主な疾患とは

高齢者は肉体的な衰えとは別に、何らかの疾患を患っていることがあります。
高齢者に多い疾患としては、 パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、骨粗しょう症、脳梗塞、脳出血、高血圧、動脈硬化症、糖尿病、ガン、心筋梗塞、狭心症等があげられます。
また、肉体的な疾患の他に、うつ病などの精神疾患を患っているケースも頻繁に見受けられるのです。

(2)高齢者の心理

高齢者は、高齢者の心理的特性により、対人関係の不適応を招くことがあります。そのため、コミュニケーションをはかることができず、治療が困難となるケースも発生します。
高齢者に見られる心理的特性としては、次のようなものがあります。

①孤独感
社会的な役割を喪失し、疎外されていると思いがちです。そして周囲もそのように扱ってしまいがちです。それに加え、精神的な居場所もなくなり、孤独感を抱くようになります。特に、病気を患っている、家族と離れ一人暮らしをしている場合は、より一層孤独感を深めてしまうのです。

②過去への執着心
誰しも過去を懐かしむ傾向はありますが、現状に不満を抱えている場合、また寂しさや孤独感を感じている場合には、現状の状況を否定し過去への記憶に生きようとします。
これがひどくなると過去に対しての執着心が強くなり、社会生活における人間関係の構築に困難が生じるようになります。

③不安や恐怖心
高齢者にとって死は身近なものです。しかし、それを受け入れる準備ができていない人にとっては不安と恐怖の対象でしかありません。肉体の衰えとともに、死に対する不安と恐怖はますます大きくなっていきます。

④精神状態が不安定
環境の変化や精神的ストレスはもとより、些細な病気でもそれが誘因となり精神状態が不安定となり、鬱(うつ)・心気症・意欲低下・妄想・執着心等を起こしやすくなります。不眠があれば、余計にこれらの症状が悪化することになるのです。
新しいことや、慣れない環境などに接する時には、事前緊張が強くなり、疲労しやすく情緒が不安定になることが多くなります。
歯科治療の開始等で、生活のリズムが大きく変化するような場合は、体調の管理に努め無理のないよう心がけることが重要です。

⑤食欲不振から脱水、低栄養に
歳を重ねると、食が細くなり、あっさりしたものを好むようになります。また、病気や機能低下により、バランスのよい食事をとれない状況も起こってくるのです。
さらに、加齢による体内細胞の減少に伴い、体内水分量も減るため、脱水や低栄養に陥る状況にあります。
毎日、バランスのよい食事を取れるよう助言が必要です。

⑥高齢者の口腔内
身体機能の低下や障害等のために、ご自身では口腔内のケアを行えない方が、若年層に比べて多く存在します。
口腔内の状況に問題のある人の割合は、要介護度に関係なくほぼ一定の比率です。逆に、施設内でサービスの一環として口腔内のケアを行っていたり、状態の悪い方ほど介護者がケアを行っているため、介護度の重い人ほど口腔内の状況が良いケースもあります。

⑦高齢者の歯科治療における留意点
高齢者に対して訪問歯科診療を行うさい、院内で行う診療とは異なる障害やリスクがあります。主な障害やリスクには次のようなものがあります。
■ 障害のため口を開くことができない。開口の姿勢を保持できない
■ 寝たきりやそれに近い状態のため、治療に必要な体位を取ることが困難
■ 認知症等により、治療方針を理解できない
■ 家族が治療を希望しても、本人が理解できなため協力が得られない
■ 口腔内の変化が激しい
■ 全身の疾患状況によっては、必要と思われる治療ができない
■ 診療中に容態が急変する危険性がある

訪問歯科診療を行うときには、これらの問題点やリスクに気をつけ、リスクヘッジをはかりながら診療を行うことが必要となります。

(3)障害者への訪問歯科診療

身体障害者、精神障害者などの障害者に対する歯科診療は、社会的に不利な状況下にあるため、高齢者に対する歯科診療と同様に取り残されがちです。
単独では通院が困難な方が多いため、障害の程度に応じては訪問歯科診療の対象となります。

(4)障害者の歯科治療における留意点

障害者への歯科診療は、障害やコミュニケーション上の問題により、健常者への歯科診療と比較しさまざまな困難やリスクが伴います。
障害者への歯科診療にかかわる問題点としては次のようなものがあげられます。
①行動から見る特異性
■ 歯科診療を嫌がり(怖がり)診療が開始できない
■ 歯科医師の指示が理解できず意思の疎通が困難である
■ 突然予測不可能な行動を起こす
■ 器具に対する反応が強い
■ 術者に対する抵抗が強い 等

②医学的に見た特異性
■ 他の疾患を併発する可能性があるため、医療上のリスクが高い
■ 他の疾患を併発する可能性があるため、治療方法や内容が限定される 等

③機能的な面から見る特異性
■ 開口が困難である
■ 開口の維持が困難である
■ 突発の不随運動が起こる
■ 鼻呼吸ができない
■ 口腔内への刺激により、呼吸困難を起こす

これら障害者に起因する問題のほかに、診療を行う側の問題としては次のようなものがあります。
■ 障害者に対する情報不足
■ 障害者に対する理解不足
■ 障害者への診療に対する不安
■ 障害者に対するコミュニケーションスキルの不足

心や体に障害のある方々のお口の健康を高めることも地域貢献の一環として重要なことです。
歯科治療が心の傷とならないよう、やさしく少しずつ根気よく処置を行っていかなければなりません。

普段の診療でも言えることですが、医療で重要とされることは「問診票を正確に書く」ということです。「今までにどのような病気に罹ったことがありますか」「現在飲んでいる薬はありますか」といった内容の質問を記載してもらいます。
全身疾患や投与薬剤の中には歯科治療と関連のあるものが意外に多いのです。
ある種の病気では血栓を予防するために抗凝固薬が処方される場合があります。
抗凝固薬は血液が固まらないようにする薬のため、歯科治療で抜歯したあと止血しなくなってしまう可能性があります。抗凝固薬を飲んでいる患者には歯科医師が内科の先生と相談し、抗凝固薬をそのまま続けるか、減量するか、あるいは一時的に中止するかを決定してください。
その場合は、診療情報提供書のやりとりが必須となります。
また、アスピリン喘息という病気があり、アスピリン喘息の患者は抜歯後などに処方される痛み止めの薬で喘息発作が起こることがあります。歯科医院で処方される鎮痛薬の多くはアスピリン喘息を起こしやすいといわれています。
歯科医師がアスピリン喘息であること知らず、鎮痛薬を渡してしまう可能があります。アスピリン喘息の患者は、必ず把握しておく必要があります。
初診時は健康だったが、歯科治療を続けているうちに、内科的な病気になり、かかりつけの病院で薬を処方されたというときも歯科医師に報告していただいて下さい。歯科治療と関係がある薬かどうかは、医師と歯科医師が判断します。患者には薬の名前を報告していただければよいのです。

(1)薬剤による口腔内への影響

薬剤には副作用がありますが、口腔内に及ぼす影響としては「歯肉増殖」と「口渇」があります。副作用は必ず出現するものでもなく個人差もありますが、治療前に把握しておくことが必要となります。

①歯肉増殖
歯肉が腫れあがり、悪化すると歯の大部分が隠れてしまうことになります。原因は不明ですが、プラークが付着していると悪化し、除去すれば抑制されることが判明しています。
歯肉増殖が起こる可能性のある薬剤としては、次のものがあげられます。
②ドライマウス
唾液量の減少は薬剤によっても個人によっても異なります。高齢になると唾液の量が減少するため、どこまでが薬剤の副作用なのかは明確にすることはできません。
ドライマウスが起きる可能性のある薬剤は非常に多いのですが、その中でも広く用いられているものとしては次のものがあげられます。
(2)投与されている薬剤の把握

訪問歯科診療はもちろんですが、最近では高齢化社会を反映し、外来でも高齢の患者が増えています。歯科受診される患者の年齢も高くなっています。誰しも年を重ねるにつれて動脈硬化が進み、血圧症や糖尿病といった、いわゆる生活習慣病にも罹りやすくなります。何らかの基礎疾患を持っている、あるいは内科の先生から薬をもらっているという患者は、必ず、そのことを歯科医師やスタッフが把握してください。安全に歯科治療を行うためには、患者の情報は重要です。

 

高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
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