これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 応用編」① 2015.05.12
対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・
訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者
在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、
訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる
今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。
訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく
お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの
質向上につなげてください。
第1節 歯科検診
1)歯科検診の意義
歯科検診の意味は、治さなければならないところは早く治しておく、ならないように予防する、ということです。検診後の措置が十分行われる事が重要となります。
特に高齢者の場合、義歯を外した後の粘膜が一見汚れているだけに見えても、治療が必要であったり、義歯の不適合からくる炎症であったり、内科的疾患が原因だったりすることもあり、それにより口腔ケアの方法も変わってきます。
患者や家族、介護事業者が口腔状態を知ることが口腔ケアの第一歩といえます。
(2)依頼から検診まで
介護事業者(通所施設や入所施設)へボランティアとしての検診の告知・啓蒙・検診を行います。興味を持たれ実施の意思表示をされた施設等と歯科医院のスケジュールを調整し、検診日時を決定します。
検診実施後、検診結果を患者へ検診診断票を作成していただきます。業務の流れは以下の通りです。
① 歯科医院が介護事業者へ検診の提案を行います
② 介護事業者から歯科医院へ検診の依頼があります
③ 歯科医院、介護事業者双方のスケジュールの詳細を打ち合わせます
④ 歯科医院は検診を実施します
⑤ 歯科医院は検診結果を歯科健康診断結果報告書として作成します。
(3)検診後から治療開始まで
① 検診終了後、医院にて作成した各利用者(受診者)の歯科健康診断結果報告書を施設へ送付または持参します。
② 介護事業者は受診者もしくは家族へ歯科健康診断結果報告書を配布します。
③ 診療を希望する受診者は介護事業者へ依頼してから歯科医院に依頼するケースと受診者から直接依頼されるケースがあります。
(3)検診時のそれぞれの役割と注意点
検診は、訪問歯科診療と同様、歯科医師、歯科衛生士あるいはスタッフの2人~3人で行います。それぞれの役割は次のようになります。
◆歯科医師
・受診者の名前を確認。
・全身状態を把握。
・口腔内検診。
・最適な治療方法を伝える。
・治療するメリットを伝える。
◆スタッフ
・受診者の身体の補助。
・歯式をとります。
・入れ歯の洗浄やうがい。
・終了後の移動の介助。
(4)検診時に持参するもの
検診には以下のような備品が必要になります。後で忘れたなどということがないよう、「持ち物リスト」を作成し、医院を出発する前にチェックすることです。
(5)施設等へ訪問し実施する集団型の検診の場合
① 検診実施当日は、施設の中にスペースを設けます。机が1つと3~4脚の椅子があれば十分可能です。利用者のいる場所とあまりにも近い場合には、ついたて等を利用し検診風景が見えないようにすることもあります。
検診希望者の名前を呼び順番に検診を行います。
※利用者の方は歩行が不自由な方が多いため、検診スペースのすぐ近くに椅子を用意し、次の順番の方をあらかじめ待機させるなど効率化を図ります。
② 検診当日の流れは次のようになります。
(ア) 施設へ到着したら施設スタッフの方へ挨拶を行います
(イ) 検診開始の準備を行います
(ウ) 準備が整い次第、利用者の方へ挨拶と簡単な自己紹介を行います
(エ) 予め決定している順番に検診を行います(順番は施設で決定)
(オ) 当日の検診予定者が全て終了、後片付けを行います
(カ) 施設のスタッフの方へ終了報告を行い退出します
③検診実施時の注意点
(ア) 受診者の方への挨拶は大きな声で行います。
(イ) 名刺を渡して自己紹介します。
(ウ) 受診者の方の名前を確認し、必ず名前で呼びます
(エ) 受診者の方と話をする時はゆっくり、はっきりと話をします。
(オ) 施設スタッフ、利用者双方から見られているという意識を常にもって行動します
(カ) 検診時に強引な営業トークは避けます。
(キ) 受診者の方が他の歯科医院を利用していても他の方と同じ態度で検診を行います。
(ク)特に認知症、耳が遠い、目が悪い等コミュニケーションにおいての能力を確認してください。本人には絶対聞かない。
(ケ)長く口を開けさせない。首を助手が固定する、または歯科医師が態勢を変えて受診者の身体の負担が無いようにする。
(コ)検診中は受診者の訴えをよく聞くようにする。
(サ)移動の介助及び椅子にしっかり座らせます。介護事業者の手を煩わせないよう努めます。
(シ)受診者の訴えや歯科の治療履歴等を細かくメモします。
(ス)大きな声で検診終了を伝えます。高齢者はずっと居座り続けます。
(セ)受診者が訪問歯科診療を望んでいる場合がしばしばありますが、その場で受診者本人と歯科医師の間で訪問のアポイントなどの具体的な約束は決してしてはいけません。必ずトラブルになります。
(6)患者のご自宅に赴き実施する在宅型の検診
患者のご自宅を訪問し行う在宅型は、患者の居宅を訪問し検診を行います。検診対象者は通常1名ですが、ご夫婦で療養されている場合、2人の場合もあります。
在宅型を依頼する方は、何らかの口腔内トラブルを抱えている方が多いため、施設での検診と比べ患者へと移行する確率は高くなります。
しかし、強引に治療を勧めるトークを行うことは厳禁です。依頼をした介護事業者の方へ迷惑がかかる可能性があります。万が一そういう状況になってしまうと、二度と依頼は来ない可能性があります。
① 在宅型の注意点
在宅型の検診は、相手の居宅へ伺い居宅内で検診を行うため、集団型検診とは異なる点が多く、注意や配慮が必要になります。
次のことを心に留めておくことが大切です。
■ 相手の居宅内をジロジロと必要以上に見ない
■ 第三者の目に触れない場所であるため、誤解されるような行動は慎む
■ 家族の方への配慮、説明を怠らない
■ 介護者の方が立ち会っている場合は、介護者の方への説明も行う
■ 他家を訪れる際の基本的なマナーを忘れない
集団型検診と同じく在宅型検診においても、訪問歯科診療の対象とならない方が検診を受ける可能性もあります。
事前に事業者に対しては対象者のアナウンスを行っていますが、事業者の現場スタッフにより判断が異なります。
実際に居宅へ赴くまでは見極めが困難です。検診時に訪問歯科診療の対象外と思われるときは、通院を勧めてください。
訪問歯科診療の対象になるか否かは、最終的には歯科医師の裁量権で決めることです。
(7)歯科健康診断結果報告書の作成ポイント
歯科健康診断結果報告書は患者やその方のご家族が見ます。したがって、歯科健康診断結果報告書を見る方は高齢者やその方の介護者となりますので、歯科健康診断結果報告書の文面や誤字脱字に気をつけることが重要です。
歯科健康診断結果報告書を作成する場合、次のことに注意します。
■文字は大きく丁寧に書く
■言葉遣いは丁寧にする
■わかりやすい表現で記入する
施設等で高齢者を対象に行う検診は、学校検診とは異なり1名の検診に時間がかかります。そのため、歯科健康診断結果報告書はその場では完成させず、一旦医院に持ち帰り清書を行ってください。
検診時には情報収集に努め、下書きとしての歯式や状態を記載することが重要です。
例えば、利用者の話を細かく聞き、些細なことでもメモを取ります。「この入れ歯は○年前から使っている」、「入れ歯があたって○○のあたりが痛い」、「現在は柔らかいものを食べているけど、もっと別のものが食べたい」等をメモします。
この情報は、本人がどのように感じているかを知るための重要なポイントです。
また、歯科医師が検診時に話した口腔内の問題点や治療方法をすべて記入してください。
例えば、「上顎の義歯不適合 → 要リベース」、「右上3番P3
隣接面の固定」、「クラスプ破折 → クラスプ修理」、「義歯破折 → 義歯の新製が必要」等です。
歯科健康診断結果報告書に記載するさい、状態を指摘するだけではなく、どうすれば治るかが重要なポイントになります。また、利用者本人が検診時に聞いた治療方法を覚えていることもあります。検診時の話と歯科健康診断結果報告書の内容が異なっていると、不信感を抱かれることもあるので注意が必要です。
歯科健康診断結果報告書に記載する言葉は、専門用語は避け、一般の方でも理解できる言葉に変更してください。
口腔状態が、立ち会っていない家族の方にも伝わるように、「わかりやすく」することがポイントです。
わかりやすい歯科健康診断結果報告書を作成するには、次のように記入します。
[ 記載例 ]
本部では、介護事業者や患者の問合せや治療希望の受付けを行うため、コールセンターを設置しています。
会員である歯科医院事務作業の軽減と効率化、サービスの提供、患者(介護事業者)負担の軽減等を目的としています。
(1)コールセンター設置の意味
①歯科医院事務作業の軽減と効率化
介護事業者や患者からの問合せや依頼は、医院の都合にあわせて連絡が入るわけではありません。休診日や時間外、朝や夕方の忙しい時間帯に入ってくることもあります。
忙しい時間帯に問合せや依頼があり十分な対応ができなかった、休診日や時間外で対応自体ができなかった場合等は、問合せた側が満足せずに、万が一緊急であった場合は依頼を取り消すという可能性もあります。
医院としても忙しい時間に電話対応を迫られる、問合せにより時間を取られてしまい業務の妨げとなる、というような効率を悪くする原因になるのです。
②均一サービスの提供
電話による依頼や問合せの場合には、話し方や対応の仕方が重要となります。どのような対応をであったか、その対応により患者や介護事業者の印象は決まってくるのです。
訪問歯科診療という慣れない分野の問合せに対応するために、訪問歯科診療開始前に慌ててスタッフを教育する必要もありません。
(2)コールセンターのサービス
① 費用に関する問合せへの回答
問合せの中で一番多いのは、「料金」に関することです。
健康保険や介護保険、その他の疑問について回答をします。
患者の自己負担金についての説明も行います。また、往診出張料等は一切かからないことの説明も行います。
②システムの説明
訪問歯科診療システムの案内を行います。
③在宅での検診、治療希望、依頼の受付け
「在宅型検診」「治療希望」の受付けを行います。
必要な情報をヒアリングし、訪問歯科診療申し込み用紙を作成、歯科医院へ連絡します。
④クレームの対応
患者本人、または介護事業者からのクレームは、直接医院に行くよりもコールセンターへ入るケースがほとんどです。
クレームが入った場合には、オペレーターが一次受付けの対応を行います。
⑤その他問合せに対する対応
その他にも、歯科診療等に関する問合せや歯科医師、歯科衛生士による各種セミナーの依頼等、さまざまな問合せや依頼が入ります。その全ての問合せや依頼に対し、歯科医院に代わり対応を行います。
⑥チェーンマーケティングサポート
初診の前後及び注意が必要な治療の前後にケアマネージャー等への連絡を本部の歯科衛生士が行います。
細やかで安心感のある対応が継続的な依頼に繋がるポイントです。もちろん歯科医院の担当者が行っていただく場合もアドバイスをさせていただきます。
診療が開始してからの対処等、医院内のスタッフが滞りなく実践することが重要です。
「聞いていない」、「担当ではないから分からない」では今後の診療や業務に支障をきたす場合もあります。
日々のルーティンワークを確立しておくことは、スムーズに業務が行え、時間やスケジュールをきちんと把握できるようになるのです。
(1)受付から初診まで
診療依頼の受付けから初診までの流れは次のようになります。
① 診療の依頼が、TEL等で歯科医院に入ります。
② 歯科医院が患者との間で初回訪問日時を決定します。
③ 歯科医院は決定した初診日をケアマネージャー等のキーパーソンへ連絡します。
④ 歯科医院は患者宅(または施設等)を訪問し、診療を開始します。
(2)初回訪問日のスケジュール
院内のスケジュールの都合上、または歯科医師の都合ですぐには訪問できない場合でも、初診日を決定するための連絡はすぐに行います。可能な限りスケジュールを調整してください。
アポイントの日時があまり先になると、予約をキャンセルされることがあります。
診療を申し込んでから連絡が来るまでに時間が経つと、キャンセル率が高くなるのです。
初診の予約を取るときに次の内容は必ず聞いてください。
■訪問可能な日時(都合の悪い日や時間を聞いて、その他は可能なのか確認します)
■主訴の確認
■要介護度、障害等級の確認
■全身状態、コミュニケーション能力の確認
■緊急度の確認
■キーパーソンの確認
■ケアマネージャーの確認
■家族や介護事業者等による初診時の立会いの有無
■保険の種別(当日は保険証を用意してもらうようにあらかじめ依頼します)
■駐車可能なスペースの有無
■自宅周辺の目印となるような物の有無
日時を決定するときは、近隣の患者の訪問予定にあわせて、患者の都合の良い時間帯から選択すると効率が良くなります。
高齢者は週単位でいろいろなサービスのスケジュールが決められていることが多いため、初診の曜日と時間帯を次回以降も適用した方が次回の予約が取りやすくなります。そのため、初診日時の決定は重要な意味を持ちます。
患者からのクレームで一番多い内容は、「時間になっても来ない」というものです。はじめが肝心です。初診時の予約は特に余裕を持ったスケジューリングが求められます。
また、予約の時間を決定するときには、「○○時」といわずに、「○○時前後」や「○○時から○○時」と言うように30分程度の幅を持たせる方法をお勧めします。
万が一、予約の時間に遅れそうな場合は、必ず相手に連絡を入れます。そのときには、遅れるということと、どれくらいの時間遅れそうなのかを伝えて、相手の都合を確認します。予想していたよりも遅れる幅が大きいときには、再度連絡を入れます。
(3)2回目以降の診療に関してのスケジュール
歯科訪問診療は、患者のスケジュールや体調への負担などを考え、週1回のペースで訪問するのが理想的です。
患者側の立場にたつと、同じ曜日の同じ時間帯ですと覚えやく、スケジュールの調整も行いやすいものです。
また、1人の患者に対して、初診日と同じ医師、同じスタッフで訪問するのがベストです。
高齢になるにつれ新しいことへの適応力は衰えてきます。信頼関係の構築が訪問診療を成功させる鍵となりますので、訪問の度に異なる医師や異なるスタッフが対応するような状況は好ましくありません。
誤解などを避けるために次回訪問の日時をメモやカレンダー等に記しお渡しすることも、トラブルを未然に防ぐためのひとつの方法です。
(4)キャンセルが出た場合
高齢者は体調が変化しやすいため、突然のキャンセルが発生する可能性が常にあります。キャンセルの連絡が入った場合には、理由を確認し、日時の再予約を行います。
しかし、入院等の理由により訪問日の決定が困難な場合には、目安となる時期を確認し、再度連絡を入れます。
(5)患者管理について
歯科訪問診療の患者は、外来の患者と比べ患者本人や家族、または介護関係者へ連絡を取る機会が多くなります。
カルテには限られた情報しか記載できないため、アポイント帳とは別に「訪問患者専用リスト」を作成し、情報を記載し管理するということは便利です。
初診のアポイントが取れた段階で「訪問患者専用リスト」に記載します。
(6)訪問前日の確認連絡
訪問する前日に、翌日の訪問予定患者に対し電話で予約確認を行います。
前の日の段階でキャンセルを把握することができれば、他の患者の予約を入れる、時間を変更する等のスケジュールの調整が可能になります。
また、初診患者やリコール患者の場合、予約を忘れている可能性もあります。必ず前日に電話で予約の確認を行うようにします。
(7)訪問当日携行器具等の確認
歯科訪問診療に出発する前に、必ずその日必要な器具や備品類が揃っているかどうかをチェックします。
医院の中で行う診療とは異なり患者の居宅内で診療を行うため、必要な器具を忘れた場合等大変困ってしまいます。
代用が効くものや、なくても何とかなるものは構いませんが、替えが効かない器具類の場合、その日の診療自体行うことが困難です。「装着予定の技工物を忘れる」というのは中でも最悪のケースですが、そのようなケースも現場では実際に発生する可能性があるのです。
基本的に、前日の夜に翌日分を準備し、翌朝、再度チェックを行うという手順になります。こうすることによって、出発前に慌てることなく準備が整い、出発直前に再度チェックを行うため、忘れものもなくなります。
前日と当日ではスタッフが異なるケースがあるということからも、夜と朝の2回チェックを行う方法は有効です。
[ 基本セット例 ]
[ 義歯調整/BT用例 ]
[ 義歯新製imp用例 ]
[ 歯内療法用例 ]
[ セメント例 ]
[ EXT/外科用例 ]
[ 充填用例 ]
[ ケア用例 ]
ここに記載している器具及び衛生品、薬剤等は、参考のものであり、強制するものではありません。
歯科医院で独自に、チェックシートを作成し、管理するのもよいでしょう。
高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
記事タグ:
これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」③ 2015.04.28
投稿者:訪問歯科119番
対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・
訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者
在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、
訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる
今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。
訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく
お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの
質向上につなげてください。
第7節 歯科医院によるボランティア活動
歯科医院の役割
(1)ボランティアでの歯科検診
ご自宅や施設、病院等を訪問し、複数の要介護者の歯科検診をボランティアで行います。
検診の目的は、「介護者、要介護者の歯科に関する意識の向上」と「訪問歯科診療の潜在ニーズの発掘」にあります。
検診を希望された方が全員訪問歯科診療の対象患者ではありません。だからといって患者に移行しなかった方の検診が無駄かというと、そうではないのです。
検診を受けたことにより、要介護者や職員の方々に喜んでいただければ、将来的な結果に結びつくのです。
現在、日本の介護は、要介護者を中心に複数の事業者が連携しています。その中で信頼を得ることが重要です。
詳細な情報は「実務編第2節検診とは」をご確認ください。
① 集団型歯科検診の対象者
■ デイサービス利用者
■ デイケアセンター利用者
■ 介護老人福祉施設等の入所者
■ 医療施設に入院中の患者
※集団歯科検診はそれぞれの施設内等で行います。
② 在宅型歯科検診
要介護者のご自宅で歯科検診を行うことを「在宅型検診」と呼んでいます。
在宅検診では1居宅あたり1名(2名の場合もあります)の検診を行います。
居宅での検診を依頼された場合、口腔内に何らかの不自由やトラブルを抱えている方が多いため、検診後の治療申し込みの確率は高くなります。
その場で治療の依頼を受けるケースが大部分です。
(2)各種セミナー
医科と比較して歯科の訪問診療は、一般的にあまり認知されていないのが現状です。
そのため、歯科領域における、口腔ケアの重要性や誤嚥性肺炎の予防、きちんと噛めることの必要性について、告知やマーケティング活動を行っていくことは大変重要です。
セミナーの開催は、その告知・啓蒙活動を行う上でとても有効な手段となります。
また、セミナーは介護事業者と歯科医院間のコミュニケーションを深める意味も持ちます。
介護事業者の方は担当の利用者へ歯科診療を進めるにあたり、「どのような先生が診てくれるのか」という不安を抱いています。
「この先生に診てほしい」「この先生なら安心だ」と事業者のスタッフにアピールするチャンスでもあります。
① セミナーの対象者
■ 介護事業所の職員
■ 介護者(家族)
■ 要介護者(介護サービスを利用している方)
② セミナーの内容
■ 口腔ケアの必要性
■ 誤嚥性肺炎の予防
■ 義歯のメンテナンス方法と義歯の方の口腔ケア
■ ブラッシング指導
■ 家庭でできる口腔ケア
■ 口腔ケアで便利なツール類
■ 口腔衛生と健康の関連性
それぞれの立場で歯科に対する知識等が異なるため、同じテーマでセミナーを行っても話のポイントやレベル、話し方を変える必要があります。
しかし、一番重要なのは「わかりやすい一般的な言葉で話す」ということです。専門用語を一般的な用語に代えて伝えることが求められます。
(3)訪問歯科診療
訪問歯科診療における治療は、さまざまあります。
訪問歯科診療で行ってはならないという処置も法的にはありません。
患者の望む治療を、真摯に行っていただきます。
初回の訪問時には、リスク低減のためにもアセスメント表は必ず作成します。
また、介護者、患者本人、介護事業者とのトラブルを未然に防ぐために、治療方針の十分な説明と同意を得ることも大事です。
患者の中には認知症等に罹患されている方や、高齢により物忘れが激しい方もいます。
治療方針は家族などの介護者の方を含めて説明するようにします。
(4)関係先への情報提供
歯科医院も要介護者をサポートするメンバーの一員です。
担当のケアマネージャーや介護事業者へのマナーとして、トラブルを未然に防ぐ意味でも、情報提供は重要です。
本部では、情報を伝える対象者別にフォーマットを用意しています。
①往診報告書
患者の依頼元である介護事業者とその患者のケアマネージャー向けのフォーマットです。
(照会元とケアマネージャーが同一の場合もあります。)
往診報告書は治療の度に毎回発行する必要はありません。
初診日や治療の節目、治療終了時などに作成します。
③ 診療情報提供書
診療情報提供書は、かかりつけの主治医、又は他の歯科(治療を引き継いでもらう場合など)向けのフォーマットでした。
しかし、平成18年4月施行の診療報酬改定より介護事業者への発行も同様の様式を使用し発行することが許可されました。
訪問歯科診療を受ける患者は、何らかの疾患を患っているケースがほとんどです。その場合、双方の医療上のリスクを回避するためには情報の交換・共有が不可欠です。
簡単な義歯の調整レベルでは必要ありませんが、抜歯等の観血処置が必要なケースでは事前に情報を交換しておくことは重要です。
第8節 高齢者や障害者の特徴について
高齢者とは何歳からをいうのか考える時、誰しもはっきりとは自覚できないものです。60歳でも足腰が弱ってすっかり老け込んでしまう人がいる一方で、80歳を越えても元気でパワフルな人がおり、その個人差は年齢とともに大きくなります。高齢者と一言でいってもいろいろな方が混在しており一概に論ずることはできませんが、適切な診療を行うために必要な高齢者の基礎的な特徴について知る必要があります。
(1)高齢者の主な疾患とは
高齢者は肉体的な衰えとは別に、何らかの疾患を患っていることがあります。
高齢者に多い疾患としては、 パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、骨粗しょう症、脳梗塞、脳出血、高血圧、動脈硬化症、糖尿病、ガン、心筋梗塞、狭心症等があげられます。
また、肉体的な疾患の他に、うつ病などの精神疾患を患っているケースも頻繁に見受けられるのです。
(2)高齢者の心理
高齢者は、高齢者の心理的特性により、対人関係の不適応を招くことがあります。そのため、コミュニケーションをはかることができず、治療が困難となるケースも発生します。
高齢者に見られる心理的特性としては、次のようなものがあります。
①孤独感
社会的な役割を喪失し、疎外されていると思いがちです。そして周囲もそのように扱ってしまいがちです。それに加え、精神的な居場所もなくなり、孤独感を抱くようになります。特に、病気を患っている、家族と離れ一人暮らしをしている場合は、より一層孤独感を深めてしまうのです。
②過去への執着心
誰しも過去を懐かしむ傾向はありますが、現状に不満を抱えている場合、また寂しさや孤独感を感じている場合には、現状の状況を否定し過去への記憶に生きようとします。
これがひどくなると過去に対しての執着心が強くなり、社会生活における人間関係の構築に困難が生じるようになります。
③不安や恐怖心
高齢者にとって死は身近なものです。しかし、それを受け入れる準備ができていない人にとっては不安と恐怖の対象でしかありません。肉体の衰えとともに、死に対する不安と恐怖はますます大きくなっていきます。
④精神状態が不安定
環境の変化や精神的ストレスはもとより、些細な病気でもそれが誘因となり精神状態が不安定となり、鬱(うつ)・心気症・意欲低下・妄想・執着心等を起こしやすくなります。不眠があれば、余計にこれらの症状が悪化することになるのです。
新しいことや、慣れない環境などに接する時には、事前緊張が強くなり、疲労しやすく情緒が不安定になることが多くなります。
歯科治療の開始等で、生活のリズムが大きく変化するような場合は、体調の管理に努め無理のないよう心がけることが重要です。
⑤食欲不振から脱水、低栄養に
歳を重ねると、食が細くなり、あっさりしたものを好むようになります。また、病気や機能低下により、バランスのよい食事をとれない状況も起こってくるのです。
さらに、加齢による体内細胞の減少に伴い、体内水分量も減るため、脱水や低栄養に陥る状況にあります。
毎日、バランスのよい食事を取れるよう助言が必要です。
⑥高齢者の口腔内
身体機能の低下や障害等のために、ご自身では口腔内のケアを行えない方が、若年層に比べて多く存在します。
口腔内の状況に問題のある人の割合は、要介護度に関係なくほぼ一定の比率です。逆に、施設内でサービスの一環として口腔内のケアを行っていたり、状態の悪い方ほど介護者がケアを行っているため、介護度の重い人ほど口腔内の状況が良いケースもあります。
⑦高齢者の歯科治療における留意点
高齢者に対して訪問歯科診療を行うさい、院内で行う診療とは異なる障害やリスクがあります。主な障害やリスクには次のようなものがあります。
■ 障害のため口を開くことができない。開口の姿勢を保持できない
■ 寝たきりやそれに近い状態のため、治療に必要な体位を取ることが困難
■ 認知症等により、治療方針を理解できない
■ 家族が治療を希望しても、本人が理解できなため協力が得られない
■ 口腔内の変化が激しい
■ 全身の疾患状況によっては、必要と思われる治療ができない
■ 診療中に容態が急変する危険性がある
訪問歯科診療を行うときには、これらの問題点やリスクに気をつけ、リスクヘッジをはかりながら診療を行うことが必要となります。
(3)障害者への訪問歯科診療
身体障害者、精神障害者などの障害者に対する歯科診療は、社会的に不利な状況下にあるため、高齢者に対する歯科診療と同様に取り残されがちです。
単独では通院が困難な方が多いため、障害の程度に応じては訪問歯科診療の対象となります。
(4)障害者の歯科治療における留意点
障害者への歯科診療は、障害やコミュニケーション上の問題により、健常者への歯科診療と比較しさまざまな困難やリスクが伴います。
障害者への歯科診療にかかわる問題点としては次のようなものがあげられます。
①行動から見る特異性
■ 歯科診療を嫌がり(怖がり)診療が開始できない
■ 歯科医師の指示が理解できず意思の疎通が困難である
■ 突然予測不可能な行動を起こす
■ 器具に対する反応が強い
■ 術者に対する抵抗が強い 等
②医学的に見た特異性
■ 他の疾患を併発する可能性があるため、医療上のリスクが高い
■ 他の疾患を併発する可能性があるため、治療方法や内容が限定される 等
③機能的な面から見る特異性
■ 開口が困難である
■ 開口の維持が困難である
■ 突発の不随運動が起こる
■ 鼻呼吸ができない
■ 口腔内への刺激により、呼吸困難を起こす
これら障害者に起因する問題のほかに、診療を行う側の問題としては次のようなものがあります。
■ 障害者に対する情報不足
■ 障害者に対する理解不足
■ 障害者への診療に対する不安
■ 障害者に対するコミュニケーションスキルの不足
心や体に障害のある方々のお口の健康を高めることも地域貢献の一環として重要なことです。
歯科治療が心の傷とならないよう、やさしく少しずつ根気よく処置を行っていかなければなりません。
普段の診療でも言えることですが、医療で重要とされることは「問診票を正確に書く」ということです。「今までにどのような病気に罹ったことがありますか」「現在飲んでいる薬はありますか」といった内容の質問を記載してもらいます。
全身疾患や投与薬剤の中には歯科治療と関連のあるものが意外に多いのです。
ある種の病気では血栓を予防するために抗凝固薬が処方される場合があります。
抗凝固薬は血液が固まらないようにする薬のため、歯科治療で抜歯したあと止血しなくなってしまう可能性があります。抗凝固薬を飲んでいる患者には歯科医師が内科の先生と相談し、抗凝固薬をそのまま続けるか、減量するか、あるいは一時的に中止するかを決定してください。
その場合は、診療情報提供書のやりとりが必須となります。
また、アスピリン喘息という病気があり、アスピリン喘息の患者は抜歯後などに処方される痛み止めの薬で喘息発作が起こることがあります。歯科医院で処方される鎮痛薬の多くはアスピリン喘息を起こしやすいといわれています。
歯科医師がアスピリン喘息であること知らず、鎮痛薬を渡してしまう可能があります。アスピリン喘息の患者は、必ず把握しておく必要があります。
初診時は健康だったが、歯科治療を続けているうちに、内科的な病気になり、かかりつけの病院で薬を処方されたというときも歯科医師に報告していただいて下さい。歯科治療と関係がある薬かどうかは、医師と歯科医師が判断します。患者には薬の名前を報告していただければよいのです。
(1)薬剤による口腔内への影響
薬剤には副作用がありますが、口腔内に及ぼす影響としては「歯肉増殖」と「口渇」があります。副作用は必ず出現するものでもなく個人差もありますが、治療前に把握しておくことが必要となります。
①歯肉増殖
歯肉が腫れあがり、悪化すると歯の大部分が隠れてしまうことになります。原因は不明ですが、プラークが付着していると悪化し、除去すれば抑制されることが判明しています。
歯肉増殖が起こる可能性のある薬剤としては、次のものがあげられます。
②ドライマウス
唾液量の減少は薬剤によっても個人によっても異なります。高齢になると唾液の量が減少するため、どこまでが薬剤の副作用なのかは明確にすることはできません。
ドライマウスが起きる可能性のある薬剤は非常に多いのですが、その中でも広く用いられているものとしては次のものがあげられます。
(2)投与されている薬剤の把握
訪問歯科診療はもちろんですが、最近では高齢化社会を反映し、外来でも高齢の患者が増えています。歯科受診される患者の年齢も高くなっています。誰しも年を重ねるにつれて動脈硬化が進み、血圧症や糖尿病といった、いわゆる生活習慣病にも罹りやすくなります。何らかの基礎疾患を持っている、あるいは内科の先生から薬をもらっているという患者は、必ず、そのことを歯科医師やスタッフが把握してください。安全に歯科治療を行うためには、患者の情報は重要です。
高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
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これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」② 2015.04.24
投稿者:訪問歯科119番
対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・
訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者
在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、
訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる
今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。
訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく
お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの
質向上につなげてください。
第4節 介護保険制度の仕組み
現在、日本では高齢化が進んでいます。その一方で生まれる子供の数は増えず、少子高齢化が急速に進んでいます。それに伴い、年々深刻になる介護の問題を社会全体で解決するために、介護保険は2000年にスタートしました。
介護保険は、保険者を市町村とし、制度に加入する被保険者を40歳以上の国民すべてとする、社会保険方式によるものです。
(1)介護保険のしくみ
介護保険における 保険者は、市町村です。
そして、40歳以上の国民は全て強制的に介護保険に加入し、被保険者となります。
市町村は、被保険者から保険料を徴収し事業を運営し、介護が必要となった被保険者が介護サービスを利用した場合に保険給付をします。
被保険者は年齢により2種類に分けられます。
■第1号被保険者・・・市町村内に住所をもつ65歳以上の者
■第2号被保険者・・・市町村内に住所をもつ40歳以上65歳未満の医療保険加入者
第1号被保険者は、住所地の市町村に保険料を納め、介護が必要になった場合には、介護サービスを利用できます。
これに対して、第2号被保険者が介護サービスを利用できるのは、介護が必要となった原因が、老化との間に医学的関係が認められる「特定疾病」による場合のみとなります。
(2)介護サービス利用の流れ
介護保険は被保険者であれば誰でも介護サービスをすぐ受けられるものではないのです。
利用にあたっては次の手順を経なければならないのです。
(3)要介護と要支援
介護保険のサービスを利用できるのは、要介護認定を受けた被保険者であり、それぞれ要介護または要支援に区分されます。
(4)ケアプランとは
介護保険制度におけるケアプランとは、要介護者等が介護サービスの適切な利用をすることができるよう、心身の状況、その置かれている環境、要介護者等及びその家族の希望等を勘案し、利用する介護サービスの種類及び内容、担当者その他厚労省令等が定める事項を書面によって計画したものです。
介護保険の基本理念は、高齢者が自分の意思にもとづいて自立した生活を送ることができるように支援することとされています。介護の必要な一般の高齢者は、どのようなサービスをどの程度利用すればよいか、またそのときにどれくらいの費用が必要なのかを、自分の意思で選択・決定することは非常に困難です。それを支援するために導入されたのが、ケアマネジメント(居宅介護支援サービス)のシステムです。
(5)ケアマネージャー(介護支援専門員)の役割
居宅介護支援サービスを提供するものを居宅介護支援事業者といい、居宅介護支援サービスを提供する人をケアマネージャー(介護支援専門員)といいます。
要介護認定を受けた要介護者が介護サービスを利用しようとするとき、市町村に作成者を届け出てからケアプランを作成し、それにそってサービスを利用しなければ給付を受けられません。
ケアプランは自分で作成することもできますが、通常は、ケアマネージャーに依頼します。ケアマネージャーは、それぞれの利用者のニーズに合わせ、支給限度基準額をこえないよう調整しケアプランを提案、本人やご家族と相談しながらケアプランを作成します(要支援者のケアプランは、地域包括支援センターが作成します。場合によっては、地域包括支援センターから委託を受けた居宅介護支援事業者のケアマネージャーが作成することもあります)。
また、ケアマネージャーは、サービスが円滑に行われるようサービス事業者との連絡・調整を行い、適正なサービスを受けられているか定期的な監視や、費用・負担額の算定を行う給付管理業務を行います。
要介護者はいろいろなサービスを利用しており、必ずしも患者の照会を受けた事業所に勤務するケアマネージャーが、その患者の担当ケアマネージャーとは限りません。
ケアマネージャーは、要介護者を取り巻くネットワークの核となる人物です。
そのため、訪問歯科診療の初診時には、必ず担当のケアマネージャーの連絡先を確認して下さい。
我々は、ケアマネージャーを核として患者の輪を広げていきます。
[ ケアマネージャーの主な職務 ]
①要介護認定の支援
■要介護認定を受けようとする方や家族への相談・助言
■要介護認定の申請代行,更新申請代行
②ケアマネジメント
■利用者や家族への相談・助言
■ケアプランの提案・調整・作成
■ケアプランに基づくサービス提供の連絡・調整
■サービス利用の定期的な監視
③給付管理
■国民健康保険団体連合会への給付管理票の提出
第5節介護サービスの種類
(1)居宅サービスと介護予防サービスの種類
居宅サービスには、介護や入浴介護、看護、リハビリなどのサービスを自宅で受けるものと、通所や短期入所によりサービスを受けるものがあります。その他に、福祉用具や住宅改修などの費用が支払われる種類のものがあります。
居宅サービスの対象者は、「要介護者」のみで、要支援者は対象となりません。
居宅サービスと同様のサービスで対象が「要支援者」であるものを、介護予防サービスといいます。
①訪問介護・介護予防訪問介護
一般的には、ホームヘルプサービスといわれます。食事や排泄・入浴・衣類の着脱・通院介助等の「身体介護」と、掃除・洗濯・買い物などの「生活援助」に区分されます。
②訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護
利用者のご自宅に浴槽や必要な機材を持ち込み、入浴の介護を行うサービスです。介助をしても自宅の浴槽に入れない方や、通所による入浴もできないような重度の方が対象となります。
③訪問看護・介護予防訪問看護
看護師や保健師等が利用者のご自宅を訪問し、医師の指示のもと、療養上の世話や医療処置を行うサービスです。
④訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士が利用者の自宅を訪問し、医師の指示に基づき、理学療法や作業療法等のリハビリテーションを行うサービスです。
⑤居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導
医師、歯科医師、看護師、薬剤師等の医療従事者が利用者のご自宅を訪問し、療養上の管理及び指導を行うサービスです
⑥通所介護・介護予防通所介護
一般的には、デイサービスといわれます。
利用者は、デイサービスセンターや養護老人ホーム等に日帰りで通所し、入浴や食事、健康維持や機能訓練等のサービスを受けます。
⑦ 通所リハビリテーション・介護予防通所リハビリテーション
デイケアといわれます。利用者は、介護老人保健施設や病院、診療所などに通所し、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを受けます。
⑧短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護
ショートスティといわれます。利用者が介護老人保健施設などに短期間(数日から1週間程度)入所し、入浴や排泄・食事・機能訓練などのサービスを受けます。
⑨短期入所療養介護・介護予防短期入所療養介護
ショートスティですが、医療的な側面が強く、医学的な管理のもとで介護・機能訓練・日常生活上のサービスを受けるものです。
⑩ 特定施設入居者生活介護・介護予防特定施設入居者生活介護
介護保険の指定を受けた有料老人ホーム等に入所している要介護者又は要支援者が受けられるサービスです。入浴や排泄・食事・機能訓練や療養上の世話等を行うものです。
⑪福祉用具貸与・介護予防福祉用具貸与
利用者等が自立した生活を送れるように、車椅子や特殊ベッド等の福祉用具をレンタルするサービスです。
⑫特定福祉用具販売・特定介護予防福祉用具販売
福祉用具のうち、入浴や排泄など、レンタルになじまないものについて、購入費の9割を給付してもらうものです。
⑬住宅改修費支給
要介護者等が自宅で安全に快適に過ごせることを目的とした一定の工事に対して、住宅改修費の9割が支給されます。対象工事内容は、手摺りの取り付けや、段差の解消、床材や扉の変更などがあります。
(2)施設サービスの種類
要介護認定を受けた人のうち、要介護1~5の方は、介護保険施設に入所し、介護や看護、リハビリテーション、療養などのサービスを受けることができます。
介護保険施設には、次の3種類があります。
①介護老人福祉施設
特別養護老人ホームが都道府県知事の指定を受けて介護保険施設となったものです。入浴や排泄、食事などの介護が中心の施設です。
②介護老人保健施設
介護と医療の両方のサービスを提供する施設で、病院から家庭へ復帰するための中間的な施設といえます。
③介護療養型医療施設
医療的な側面がもっとも強い施設です。療養上の管理、看護、医学的な管理のもと介護や機能訓練などのサービスを提供するものです。
(3)地域密着型サービス及び地域密着型介護予防サービスの種類
地域密着型サービスは、平成18年4月1日から新設されたサービスで、小規模多機能型居宅介護事業や、夜間対応型訪問介護事業等があります。
また、以前は居宅サービスの類型に含まれていたグループホーム(認知症対応型共同生活介護事業)も、新しい類型では、この地域密着型サービスに含まれることになりました。
対象者が要介護者のサービスを地域密着型サービスといい、対象者が要支援者のサービスを地域密着型介護予防サービスといいます。
①夜間対応型訪問介護
訪問介護員等が、夜間において利用者宅を定期的に訪問し、緊急の通報に随時対応など、包括的に夜間訪問介護を提供するサービスです。
②認知症対応型通所介護・介護予防認知症対応型通所介護
通所介護(デイサービス)の特殊例で、認知症の利用者のみを対象とするサービスです。
③小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護
通所サービスと宿泊サービス、訪問サービスを一体的に柔軟に提供するサービスで、利用者にとってはなじみのある事業所において、様々なサービスをうけることができるという、優れたサービスです。
④認知症対応型共同生活介護・介護予防認知症対応型共同生活介護
グループホームといわれます。
要介護者のうち、中程度までの認知症高齢者が受けられるサービスで、小規模な施設で共同生活をおこなうものです。
⑤地域密着型特定施設入居者生活介護
利用定員29人以下の特定施設(有料老人ホーム)です。
(4)介護保険における歯科の役割
歯科医療機関が行う介護保険上のサービスは「居宅療養管理指導」です。
これは、歯科医師が行う場合と歯科衛生士が行う場合の2種類があります。
① 歯科医師が行う場合
通院が困難な利用者に対して「指定居宅療養管理指導事業所」の歯科医師が、訪問して計画的、かつ継続的な歯科医学的管理に基づく指導・助言を行います。
② 歯科衛生士が行う場合
「指定居宅療養管理指導事業所」の歯科衛生士等が、計画的な歯科医学管理を行っている歯科医師の指示に基づき、居宅を訪問して療養上必要な指導として患者の口腔内の清掃または有床義歯の清掃に関する実地指導を行います。
介護保険で「居宅療養管理指導」を請求する場合、医療保険で重複する項目は算定できなくなります。
算定できない項目としては次のようなものがあります。
■ 訪問歯科衛生指導料(360点,120点)
■ 歯科疾患在宅療養管理料(140点+50点,130点)
■歯科疾患管理料(110点)
介護保険の居宅療養管理指導は、医療保険の医学管理(指導)より優先します。患者が介護保険の認定を受けている場合、上記の項目を算定するような治療を行ったケースでは、介護保険の「居宅療養管理指導」で算定しなければなりません。
「居宅療養管理指導」は介護保険の支給限度額管理の枠外になりますので、要介護者が限度額いっぱいまで介護サービスを利用していても、自己負担分は1割(現役所得並みの方は3割)で済みます。
高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
記事タグ:これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」②
これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」① 2015.04.22
投稿者:訪問歯科119番
対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・
訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者
在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、
訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる
今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。
訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく
お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの
質向上につなげてください。
はじめに
在宅医療とは、疾患があり定期的な通院が必要な状態であるにも関わらず、何らかの事情で定期的な
通院が困難な患者に対し、医師や歯科医師を始めとする医療従事者が定期的な訪問を行いながら、
在宅で医療をおこなうこととされています。在宅医療はまだ歴史が浅く、これからの医療です。
しかし、これからの超高齢化社会や医療の制度改革により、今後の在宅医療の重要性がますます
高まることは明らかです。患者様の価値観に敬意を払い、暮らしのなかで「いのちを支える」、
「生き方を支援する」医療活動なのです。どの地域に居住していても、安心で安全、
そして質の高い歯科医療を受けられるようになること、それが訪問歯科診療を推進する我々の
共通の願いです。
第1節 訪問歯科診療
1)訪問歯科診療の現状
厚生労働省の定義では「訪問診療」と「往診」は明確に区別され、患家の要請によるものではなく、
計画的な医学管理のもとに定期的に患者宅あるいは社会福祉施設等に訪問して実施されるものを
「訪問診療」と言い、患家の求めにより緊急に診療に赴くことを「往診」としています。そのため、
居宅または社会福祉施設等において療養を行っている通院が困難な高齢者や障害者の方々に対し、
居宅や社会福祉施設等を訪問し歯科診療を行うことを「訪問歯科診療」と呼びます。
(2)診療内容
通常、院内で行う診療の大部分は、訪問診療でも行うことは可能です。
しかし、高齢者の健康状態によってはリスクが大きくなる場合もあるため、そのような場合、
治療を行わないケースもあります。
また、ご本人、ご家族、介護事業者の方によく説明し、大学病院の紹介やリスクを伴わない
範囲の治療や口腔ケア、管理指導等の対応に留める場合もあります。
(3)治療費
訪問歯科診療は院内で行われる診療と同様、患者が持っている健康保険証が適用され、
一部負担金は各々の負担金にて徴収します。但し、訪問先が「居宅」の場合であって、
該当患者が「要介護認定者」である場合は、歯科医院側が実施する「医学管理」等は
介護保険の適用となり、医療保険の一部負担金と介護保険での負担金が同時に発生します。
*交通費や謝礼は一切いただかないように努めてください.
第2節 訪問診療を開始する前に
高齢患者は特に医療に対する要求や気持ちの変化が顕著な場合が多く、ただ疾病を診るだけでなく、
その生活環境や介護状況、精神的状況等を包括的に把握し対処する必要があります。
在宅においては本来、検査や高度な治療がおこない難い反面、患者の置かれる立場を
認識することが必要です。
したがって訪問診療では、患者の家庭環境や人生観に合わせても医療を構築することが重要となります。
患者や家族の意思や状況を無視して医療を組み立てたとしても、決して長続きはしないのです。
(1)情報収集とラポール形成
訪問歯科診療において患者に関する情報を得るということはとても重要なことです。
高齢者は何らかの疾患に罹患している、あるいは何らかの薬剤を服用している
ケースが多く見受けられます。
また、身体状況が急激に変化することも、しばしばあります。
そのため、訪問歯科診療を行うにあたり、
患者がどのような疾患に罹患しているのか、主治医の医師はどこなのか等の情報を
得ることは必須です。
感染症予防の観点から、感染症罹患の有無を確認することも同様です。
また、患者を取り巻く人間関係を把握するということも必要です。
介護者の誰がキーパーソンなのかということを理解していないと、
後々、治療方針や家庭内の人間関係を巡る
トラブルに巻き込まれる可能性があります。
直接、間接的にできるだけ多くの情報を得るという姿勢、
人間関係を構築するという姿勢が、初診時には求められます。
(2)歯科診療だけではない
訪問歯科診療は、歯科の治療がメインであることは間違いありません。
しかし、歯科治療はメインであって、全てではありません。
訪問歯科診療では、介護の知識や実務、緊急時の対応なども把握していなければなりません。
把握していることにより、緊急時やトラブルを回避することが可能となります。
(3)コミュニケーション
訪問歯科診療は、患者の日常の生活空間に赴き診療を行います。
誰しも、見ず知らずの人に住居内を見られるのは嫌なものです。
また、自宅に来てもらっているという遠慮もあります。
介護者は、要介護者の介護で肉体的にも精神的にも疲れ、
余裕を無くしているものです。
こちらから率先して声をかけたりするなどの心配りが、コミュニケーションを円滑に
進める第一歩となるのです。
コミュニケーションを取るという姿勢がなければ、成功はありえません。
①コミュニケーションを取る上でのタブー
訪問歯科診療は、院内での診療に比べコミュニケーションが最重要項目となります。
コミュニケーションがうまく図られ、信頼関係が構築されると診療もスムーズに行えます。
逆にコミュニケーションがうまくとれず信頼関係が築けなかった場合、診療を拒否されることもあります。
患者様とコミュニケーションを図る上で、タブーな行為として、次のようなものがあげられます。
■急がせる
高齢者は体力の衰えにより行動が遅くなる、認知症や障害により言葉が不自由になったりします。
しかし、決して急がせてはいけません。急がせることにより劣等感が増し、
認知症などの症状を悪化させることがあります。
■ばかにする
高齢者の行動や言葉をばかにするような言動も避けるべきです。
認知症を患った方であっても自分がばかにされているということは理解できるのです。
赤ちゃん扱いすることも、同じようなものです。
■無視する、話を聞かない
高齢者特有の心理として「孤独感」「孤立感」「疎外感」があります。
無視、または話しを聞かない等の態度をとられることにより、
より一層の「孤独感」「疎外感」におそわれます。
■否定する
自分の言動について否定されると、傷つき、反感を抱かれることがあるので避けるべきです。
②患者との信頼関係を構築する
コミュニケーション上のタブーを行わないというのは当然ですが、
患者様とのコミュニケーションを図る上でポイントとなる点に次のようなものがあります。
■相手を呼ぶときは名前で呼ぶ
「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく相手の名前で呼びます。
■笑顔で接すること
高齢者は新しいことへの対応力が落ちています。笑顔で接することにより、
少しでも緊張を和らげることが必要です。
■顔を見ながらゆっくり話す
聴力や理解力が衰えています。ゆっくり、はっきり話します。
顔を見て話すことで相手も安心できます。
■個人を尊重すること
表現が不自由でも理解力はしっかりしています。
見下したような言動は相手を傷つけてしまいます。
■相手の話をよく聞く
言葉が出るまでに時間がかかるものです。言葉が不自由であっても、
せかさずじっくり聞く姿勢を見せることにより、安心します。
話し掛けても反応が鈍い方や認知症の患者であっても、家族にだけ話し掛けていると、
患者様は疎外感を感じます。「話してもわからないだろう」というのは、
治療する側の勝手な思い込みです。理解できているのかできていないのかは、
本人にしか判りません。患者に伝えなければならない内容は、家族だけでなく必ず患者本人にも
伝えてください。敬意を持って接してください。
③家族との信頼関係を構築する
患者の家族とのコミュニケーションは、患者とのコミュニケーションと同じくらい重要です。
患者本人が話を理解できない場合や治療に協力的でない場合、
家族への説明や同意が必要となります。
逆に、家族が治療に対し好意的でない場合、治療を断られてしまうケースもあります。
家族とのコミュニケーションで重要なポイントは、相手の立場・心情を理解する、
理解しているという姿勢を見せることです。家族は患者の介護で、
精神的にも肉体的にも疲労しています。
そして、介護している期間が長ければ長いほど、状態が悪ければ悪いほど疲労は重くなり、
精神的な余裕が失われています。たとえ短い言葉でも心からのねぎらいの言葉をかけることが、
家族との関係を良くするひとつのポイントです。
(4)インフォームドコンセント
一般的に歯科治療は費用が「高い」というイメージがあります。
訪問歯科診療に至っても同様です。
治療計画を患者様またはご家族へ以下のことを明確に示してください。
・現在の口腔状態
・治療内容
・治療期間
・費用
・ご家庭での留意点
訪問歯科診療は、患者やご家族に喜んでいただいてはじめて成功するのです。
(5)患者様本位
患者の主訴を第一優先事項とします。経済的な理由や家庭環境、
身体状況はおひとりおひとり異なります。
院内での診療の場合、本人が通院を止めれば済みますが、
訪問歯科診療の場合はそうはいきません。
診療の押し付けをしてはいけません。
(6)患者の健康状態を把握する
患者は日によって体調が変化しています。特に外科的な治療を行う前は、開始する前に、
患者本人あるいはご家族にヒアリングすることが必要です。
患者様の状態を考慮した診療が重要です。
次回につづく。
高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、
口腔ケア、口腔リハビリのご相談は
訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
記事タグ:これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」①
「第2回めぐろ認知症ぷらすミーティング」に参加しました 2014.11.06
投稿者:訪問歯科119番
2014年11月5日(水)は、中目黒GTプラザホールにて開催された「第2回めぐろ認知症ぷらすミーティング」に訪問歯科の情報提供を行いました。
今回の企画は認知症を前向きに考え、上手な介護を実現するという総合イベントでした。
11時に開演し多くの方が「認知症ぷらすミーティング」に参加され、情報交換等を行っていました。
12時30分からはmultiple(マルティプル)バイオリン・坂本尚史(たかし)さん、ギター・福西健実(きよみ)さんによるバイオリンとギターを使い、アナと雪の女王、情熱大陸などの名曲を生演奏して頂き、ご来場された方々に大盛況でした。
13時30分からは新里和弘先生(都立松沢病院認知症疾患医療センター長)による『認知症との付き合い方』の講演があり、こちらも認知症のご家族の方や関係者がとても熱心に講演を聞いていました。
講演後は新里先生にも参加して頂き、認知症カフェを行い集まったご家族の方々の認知症についての悩みや相談などを新里先生が、一問、一問丁寧に分かりやすく説明をしておられました。
「認知症カフェ」を主催したNPO法人Dカフェまちづくりネットワーク(たけのこ)は平成10年より活動している目黒区の認知症家族の会です。第2日曜日と、第4土曜日に認知症カフェを開催し、各自治体で認知症カフェは開催されています。
ご家族の方にとってはお悩みを聞いていただける場所、地域の方にとっては認知症の理解を深める場所となりますので、お悩みを抱えているご家族のかは一度ご参加してみてはいかがでしょうか。
認知症カフェに参加しご家族の方々とお話をさせて頂き、改めて認知症と歯科の関係の重要さを再確認しました。通院が困難な方が訪問歯科診療を在宅で受けることで認知症・誤嚥性肺炎・胃ろうの予防にも繋がりますので、訪問歯科診療の認知度を上げる為にも今後も積極的に活動していきます。
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